1月1日 佐倉亨のお年玉

 SLWにも冬休みはある。もちろんそこは特殊警察組織、正規隊員となれば自由に休めるわけではないが、ジュニア隊員のうちは一般的な高校生らしく帰省する者が大半で、クラスメイトの山本や村上、それに美鈴も姉・美雪と休みが重なった年始の数日間は自宅で過ごすという。親が海外にいるエデンと、家族はいないというほたるのことは気がかりだったが、須藤が付いていると笑って見送ってくれたので心配はしていない。あまり気を遣うと(特にエデンは)かえって気を悪くするだろうし。
 佐倉家はといえば、父・正はどこにいるのか知らないが、年末年始を一緒に過ごした記憶など遥か彼方に置き忘れてしまった亨は気にしない。下戸の母・あやのと未成年の子どもしかいないからお屠蘇でほろ酔いというわけでもなく、亨はスマホに届いた挨拶のメッセージへの返事を大方済ませると、さゆりが図工の時間に小学校で作ったというかるたを持ち出してきたので遊んでいた。
「はいこれ、お年玉」
 つい意地悪をしたくなって、ひとまわり年下の妹に本気を出した結果、さゆりは新年早々ムッスリ口先を尖らせていたのだが、母の声で表情がぱっと明るくなる。
「お年玉!ママ、ありがとう!」
「パパにもね?」
「パパもありがとう!」
 さゆりが写真立ての父に笑いかけるものだから亨は顔を背けて吹き出しそうになるのに堪えた。さゆりに他意はないのだろうが…… これでは父が死んだみたいではないか。
「亨には、これ」
「……ありがとうございまーす」
 ポチ袋を手渡されるこの瞬間、そろそろ「嬉しい」よりも「気恥しい」の方が強くなってきた。まあ有難く使わせてもらうのだけれど。
 それからあやのは、夏以来いつも扉を開けているらしい仏壇に向かって、もう一人の息子へも。
「護にも。あけましておめでとう」
「……」
 おそらく亨と同じだけの重さのポチ袋が供えられて、それだけのことが妙に嬉しい。
 お雑煮を食べたいと言い出したさゆりに引き摺られて、あやのはすぐに仏壇の前から立ち上がってしまったけれど。亨は空いたその位置に腰を下ろして、写真の中の兄と見つめ合う。
「これからも俺たち、同じなんだよな。護」
 お前はもう居ないけれど。

「俺も兄貴みたいになれるよう、頑張るよ」

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