幽霊少女の奏鳴曲

幽霊少女の奏鳴曲

エピローグ 琥珀

 白く輝く霊廟を仰ぎ、李紅元は「ほう」と感嘆の息を漏らした。「何度も訪れていますが、いつ見てもやはり美しいですね。心が洗われる気がしますよ。そう思いませんか、風音?」 隣に立つ風音は、確かに荘厳だとは思ったがあまり感銘は受けなかった。 た...
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第29話 反省会

「少し、言葉の使い方に気を使うべきですよ、理仁。彼女は大変混乱していました」 優雅な所作でカップを手に取り紅茶をすすって、ベアトリクスはそう言った。 理仁は叱られた子犬のようにしょぼんと、「反省している……」と答えた。「無事であるというの...
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第28話 ただいま

 目を覚ますと、そこはどこかのベッドの上で、「ミーナ!」と駆け寄ってくる紅眼の少女がいて、床では銀髪の青年がこちらに背を向けて、たくさんの端末に囲まれていた。ああ、まだ終わっていないんだとなんとなく理解した。「大丈夫? まだ寝てなくちゃ…...
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第27話 お前の分野

 アニルが理仁に斬りかかろうとした瞬間、映像が乱れた。「領域を乗っ取られた!」聖が叫び、ミーナは友人が採った恐ろしい行動に気づいて青ざめた。「アンジュよ、あの子、避難先からあんたの支配権を奪ったのよ!」 ミーナの言った通り、別の領域に避難...
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第26話 処刑

 幼い頃から仮面を被って生きてきた。 ニコニコと笑顔を振りまいて、実に『子どもらしい』子どもを演じてきた。 その方が楽だと知っていたから。 職人だった父は、息子のアニルから見てもひどく頑固で融通がきかなくて、大事な客に対しても愛想笑い一つ...
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第25話 こちら側

 聖のいるミーナの研究室の前に無事到着した十兵衛とミーナは、どうしてドアが叩き壊れているのかと顔を見合わせたあと、そっと部屋を覗き込んだ。持ち込んだ端末に囲まれて、床に座り込んでいる派手な銀髪の男。十兵衛は「聖さん!」と駆け寄り、ミーナは...
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第24話 迎えに行こう

 理仁が太刀を振り下ろそうとした瞬間、世界が変わった。 白い迷路のような世界で、目の前のアニルが醜く嗤っている。「《改正法》はまだ扱い慣れていないと見ました」「……ッ!」 アニルの手に現れたピストルが理仁の頭部を狙っている。 理仁は身をひ...
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第23話 立法者

 強力な異能を操作でき、かつ、不老不死の性質を有する、特殊な異能者たちが存在する。 彼らは学術上〈結晶型〉能力者と分類されている。 異能者を異能者たらしめる特殊な細胞・Sn細胞が〈結晶化〉し、それが彼らに強力な異能と不老不死の身体をもたら...
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第22話 もう一度だけ

 あーあ、馬鹿だなぁと、自嘲する。 今さら気づいても遅いのに。もう、あの子を望む資格なんてないのに。 どうせあの子が戻ってこないのなら、このまま全部消して、逃げちゃえばよかったのに。頭の片隅で数分前までの自分の影が勿体なさそうにため息をつ...
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第21話 引っ張っていってくれるのは

 桜は白い廊下を走りながら考える。 『へらへら笑って、なにも恨んだことありませんみたいな顔しちゃって! みんながみんなそうやって幸せに生きてきたわけないでしょ!』 そうだ、みんながみんな、同じなわけがない。自分の子供時代が幸せだった...
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