紅い鬼子の子守唄

第1話 さりげなく

   まずは、偵察。(さりげなく……) 亨はカフェオレのカップを受け取ると、通りに面したカウンター席に移動し、ひとつ深く息を吸い込んだ。 支部のビルは、大きなウインドウの向こうに視認できる距離。 あの上層階に理仁がいるはずで、ここか...
紅い鬼子の子守唄

プロローグ 紅い鬼子

   もう一度、会っておけばよかったな。    そんなのはわがままでしかなかったから、あたしは、あたしを誘拐する「魔王」の首に思いっきり手をまわした。 彼の肩越しに初めて見る、あたしのおうちだった場所が遠ざかっていく。―...
木偶人形の茶番劇

エピローグ 茶番

   ……かわいそう。 これまでの十五年で積み上げてきたものを、残虐な魔王の指の一振りで、砂のお城が波にさらわれるようにあっけなく失うなんて。 高遠風音は、亨の意識を追いながら、他人事にしては妙な緊迫感をもって、けれどやはり他人事な...
木偶人形の茶番劇

第13話 愛

   ほたると別れたあと、寮の部屋に戻った亨は夕食もそこそこに部屋にこもり、千里眼を開いた。 対象はもちろん桜。その意識を追いかけようとするが、距離が離れているためか、なにかに阻まれているのか、意識を辿ることができない。「……ていう...
魔法使いの雑曲集

シェフの気まぐれレシピ ~最高の食材を、最愛のあなたに~

 お嬢様のワガママは、いつだって唐突だ。    「お雑煮を食べたいわ」     元旦。  ビッグ4首領の養女・高遠風音のつぶやきで、幹部たちの仕事始めは決定した。     李は顎に手を当てて頷いた...
魔法使いの雑曲集

もちもちのおもちをおもち? ~もちを訪ねて三千里~

    ピコン。  静かなロッカールームに響く着信音。画面をスライドさせると、今年できた帰国子女の友人のメッセージが飛び込んできた。 『おもち、なくなった。ほたるにたべさせたかったのに』  ふーん。少し考えて返信す...
木偶人形の茶番劇

第12話 裏切者

   「……行っちゃったね」『まあ長居は無用だもんね』 十兵衛は亨たちを非常口まで送り届けた後、置いてきてしまった理仁を気にしてか、挨拶もそこそこに飛び去った。 それを見送った亨と、俯いたままのほたるが残る非常階段。沈黙の妖精ですら...
木偶人形の茶番劇

第11話 能美廣光

    人でなし、と言われた。 忘れそうになっていた、かつての苦悩。やはり自分は人ではないのかもしれない。そんな苦しみを、いつしか気にも留めなくなっていた。忘れてはならない罪の意識が薄れていたのだろうか。 四条理仁は、籍上の名を能美...
木偶人形の茶番劇

第10話 魔法の人形

    贈り主の願いを、相手に届けるキューピッド。 手にした相手はどんな願いでも叶えてくれる。 明日、告白してほしい、とか。 雨の日に、ぎゅっと手を握っていてほしい、とか。 もちろん、今夜は身体中に触れてほしい、とかもアリ。 ね? ...
魔法使いの雑曲集

空飛ぶゾウと絵描きと私

    これは子どもの夢だ。 本気で見ていた夢だ。      空飛ぶゾウと絵描きと私    私には他人の記憶が視える。 なぜかは知らない。ここに来てすぐ、金髪の女性から(やたらテンション高く)説明は受けたが、...
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